まっ、そんな感じ

見聞きしたことを徒然と書いてます。

立川談春芸歴40周年記念興行 3月 03/09

立川談春師匠の『芸歴40周年記念興行』の3月は「鰻の幇間」と「お若伊之助」にトーク(雪月花)の3本。

トーク(雪月花)

『これまでは『立川流の前座噺』を残そうと考えていたが、よくよく考えると前座噺は面白くない。談志の高座はDVDとかYouTubeとかで見られるけど、目の前で聴くのとでは明らかに違って面白くない』を皮切りに色々。

面白かったのが『落語家に紳士はいない。だが、寄席文字の橘右近師匠(元は噺家だが、廃業しているので本来は「師匠」とは呼ばないが)と同じく元噺家柳家小さん師匠のマネージャーだった小野さんの二人はだれに対しても腰が低く、穏やかの権化で本当に紳士だと思っていたのだが、酒が入ると人格が豹変。口が悪くなって二人一緒にはしておけないのに、宴席の帰り、同じ方向のお二人とタクシーを同席したらもうひたすら悪口ばかりで……』と。
結局、落語家に『紳士』はいないじゃん(笑)

また『チケットを買って会場に来てくださるお客様のご機嫌を取る(楽しんでいただく)だけでよいが、テレビや映画はつながりの見えない提供者や出資者が相手なので俺は怖い。
でも、志らくは何も感じていないようで、志の輔兄さんは「まあまあ」と俺たちの間に入り……結局、俺を含めたこの三人はおかしい。』(笑)

鰻の幇間

通りで旦那に声をかけられた幇間の一八(いっぱち)。だが、一八はこの旦那の名が思い出せない。
幇間としてヨイショしつつ旦那の素性を探ろうとするが旦那の方が一枚上手。
馴染といわれたボロボロな鰻屋に上がり込んだ揚げ句、五人前のお土産付で旦那に食い逃げされるというもの。

途中、出てくる女中さんのとぼけた様子は与太郎女性版といったところ。
かぼちゃ屋」の与太郎といい、この女性といい、すっとぼけた人物が本当に面白い。

お若伊之助

生薬屋の一人娘 お若は18歳で『今小町』と言われるほどの美人。
一中節(浄瑠璃の一種、今は重要無形文化財)を習いたいと言い出して、店に出入りの鳶の親方 初五郎から真面目で堅いと言われる元侍の伊之助を紹介され、稽古をつけてもらうようになる。
やがてお若と伊之助は恋仲になるが、女将によって一人娘ゆえに縁を切られ、お若は根岸で町道場をひらいている伯父の元へやられる。
この道場に夜な夜な伊之助が現れるというので伯父と初五郎で監視するすると、訪れたのはなんとどう見ても伊之助。
翌日、初五郎は伯父に「伊之助は昨夜、吉原で俺と一緒だった」と説明し、翌夜、正体を見極めようと待ちかまえる二人の前に現れたのは……。というもの。

この噺、伯父と初五郎のやり取りがいかにも落語的で面白く、また怪談噺的な不気味さと想い焦がれるお若の様子が良い。
根岸の道場の様子、吉原と根岸の位置関係(東京下町に詳しくない人にとってその距離感は重要だと思う)、庭の様子など、脳裏に情景が浮かぶ。
談春師匠はこういう本筋とは別の、場(舞台)の説明があってイメージしやすいというか、話に入っていきやすい。映像なら見ただけで分かるものを、語りだけで相手にイメージさせるのって難しいだろうなぁ。

噺が終わって三本締めの前に『前座噺、聞きたい? 俺のDVDとか欲しい?』と始めの話に戻ったりで、相変わらずチケット代以上に楽しめた。

さて、5月・6月は『慶安太平記しばり』でチケットゲット済み!!